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プロダクションに、1ステージ幾らですかというようなことを最初から聞けるわけではありませんので、日本の場合は、契約書を取り交わす時代になりつつはありますけれども、ある程度口頭で目っこをつけないといけないというようなことがございます。ですから、余り法外なギャラを要求されそうな人は敬遠する、そういう生臭い話になってまいります。
ただ、チケットが売れそうだとか、あるいは非常に後援会組織ががっちりしていて、例えば、よく私どもは、ミュージカルの主役に宝塚の男役を退団した直後の人間を想定します。私の関与しました仕事でも大浦みずきという女優の場合がありますし、最近の例では安寿ミラという同じ花組の大人気スターがやめて直後に、もう彼女は振付師にはなっても女優業はやらないと言っているのを、謝珠栄という振付家、今は演出もやっていますけれども、彼女が無理やり口説いて、真田広之と白土三平の「カムイ伝」をミュージカル化してやろうという話を持ってきたんです。それに私も乗りまして、これはスタートしかけたんですが、真田側から断られまして宙に浮いたんですね。じゃ、どうしようかと。安寿ミラがせっかく女優デビューをしようとしているんだから、これは真田広之がだめだからといって、やっぱり宝をほうり出すのはいかんということで、急遽「レディ・イン・ザ・ダーク」という大変難しい、クルト・ワイルという「三文オペラ」を書いた作曲家がブロードウエーでつくったミュージカルなんですけれども、それをやろうということを決めまして、振付・演出の謝珠栄さんも乗ってくれまして、これが非常にうまくいったんです。
こういう災い転じて福になるようなケースばかりだといいんですけれども、1人のキャストに断られますとたちまち暗礁に乗り上げる。僕も今1つ抱えておりまして、帰ったらすぐさま処理しなくちゃいけないんですけれども、そういうことがいろいろございます。演目が決定して順調にキャストが決まれば、もう制作が一挙に加速的に進むんですけれども、主役が決まっても相手役の女優さんに難航する。ましてや、主役が非常に好き嫌いの激しい人だとなかなか女優集めも難しい。あの人は嫌だ、ああだこうだといろいろ言われます。それもやっぱり一々聞いていかなくてはいけない。大阪にいて東京の役者を交渉するわけですから、しょっちゅう東京へ出ていく作業もあります。電話1本ではなかなか主役級は押さえられないし、外国の作品だと、それをある程度翻訳したものを見せないことには役者は納得をしない、そういう面倒くさいことがいっぱいございます。
キャスティングあるいはスタッフの選定がもう決定いたしましたら、あとは個々にお金の話をしていけばいいわけです。けさほども申し上げましたけれども、お金が潤沢にあるわけではごさいませんので、例えば道具を豪華にするのか、衣装を豪華にするのか、アン

 

 

 

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